カモメの眼 ― 2012年03月28日 22:00
インダスター69、28mm F2.8というレンズです。
旧ソ連時代、現在のベラルーシ共和国で生産されていたハーフカメラ「チャイカ」シリーズのレンズです。
ちなみに「チャイカ」というのはロシア語で「かもめ」、チェーホフの作品にもあり、初の女性宇宙飛行士テレシコワさんが1963年、宇宙飛行をした際のコールサインにも使われています。交信第一声「ヤー・チャイカ」(こちらカモメ)でもおなじみですが、カメラの方は70年代の生産らしいので、カメラの方が後になります。
フランジ面からフロントまで15mmほど、とにかく薄いレンズで、究極のパンケーキレンズとも言えるほどです。比較はキャノン50mm、f1.8(LマウントⅠ型)
距離環のポートレート(1m)、集合写真(3m)、風景(樹と家、10m?)のアイコンも微笑ましいです。
このレンズは取り外しができる珍しいもので、ライカLマウント(L39)とピッチは同じなのですが、フランジバックが1mmほど違うので、そのままでは無限遠が出ません。距離環を外してレンズを1mmほど奥へずらせば使えるようになります。
ネット情報を基に、早速ネジを緩めてレンズ位置を奥にしてもピントが合いません。おかしいなあと思いつつ、鏡胴側のヘリコイドのリブ(約2mm)をリューターで削ってみましたがピントが合いません。
すでにフランジバックのずれ以上に削ったはずなのに合いません。ふと見ると、ボディ側のほうに厚さ5mmのリングがついていました。
これが接写リングとなって、近接の一部分しかピントが合わない状態になっていました。外してみると、ばっちりピントが合います。
できるだけ遠くの物にピントを合わせて、距離環の無限遠の位置を合わせて戻します。ついでに距離環の可動範囲を制限しているピンのうち、近接側を抜くと40cm位からピントが合うようになります。絞り指標の位置がずれるので、赤マッキーで点をつけておきます。
こんな感じに撮れました。
ロシアのカモメ、なかなか鋭い眼をもっています。
なお、レンズが外せる理由として引伸機用に使うという説が、ネット上ではもっぱらですが、書類等を複写してマイクロフィルム化に使ったのではないかという説があります。こちらの方が理論的で納得できると思います。
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